今年の幸福度ランキングを読み解く

今年も国連による世界幸福度ランキングの最新版が公表された。首位はノルウェーからフィンランドに入れ替わったが、デンマークやスイスといった常連組が今年も上位を占めている。今年の報告書には新たな特色があり、それは移民の幸福度にスポットが当てられていることだ。

全体的な傾向として、移民の幸福度と地元生まれの人の幸福度の相関性は非常に高い。フィンランドは移民の幸福度でもトップであり、同様にランキング上位の国は、移民の幸福度ランキングでも上位に入る。

そうした傾向の中でも例外なのが日本である。全体の順位では相変わらず54位と振るわないのだが、移民の幸福度に関しては25位と大幅に改善した。「ガラパゴス」的な日本に海外から移り住むのには、相応のストレスに堪える寛容性が要るとも思われるのだが、一度慣れてしまえばやはり日本は住みやすい国なのだろう。

実際、「一人当たりのGDP」「平均健康寿命」「社会的支援」「人生における選択の自由度」といった指標の大半では、上位国と日本のスコアに大きな差異はない。これに対して、顕著に劣るのが「政府や企業への信頼度」と「それ以外」である。政府への信頼度の低さは残念ながら誰も納得が行く所だろう。そして働く人と企業との関係における互いの信頼度には、構造的かつ継続的変化が影響していると考えられる。労働環境の観点から比較すると、フィンランドはじめランキング上位国はすべからく、年功序列や終身雇用もなく転職が容易、そして労働時間が短い。社会保障が手厚い一方で、労働者の自立度が高く、企業との対等な関係性が構築されている。働く側が自己責任の上でキャリアから労働時間まで選択する自由度が、ライフワークバランス向上を通して幸福度を高めることにもつながっているのではないだろうか。日本でも緩やかではあるがそうした素地は広がりつつあり、やはり働き方改革の下で、働き手の自立度が高まれば、上位国に近づけるだろう。

では、「それ以外」の源泉は何だろうか。以前ご紹介した幸福度調査に関するコラムでは「幸せを他人と比較して決める傾向」「自己主張と自己評価が控えめな国民性」といった定説に加え、日本にありがちな「不幸自慢」を指摘した。今回の移民とのギャップは、そうした国民性の独特さを裏付けているように見える。今後、移民をはじめ日本の職場で働く「非ネイティブ日本人」が増えて行くにあたり、同じレベルの幸福度を持って、違いを融合し多様化の進んだ職場となるためには、そうした日本人特有の気質にも変化が求められることになるだろう。

 毎年国連が発表する世界幸福度ランキングのレポートには、グローバルな観点から日本の働く環境を改善していくヒントがある。会社レベルで取り組む社員幸福度向上、思考や気質の国際化、多様化を促す研修や教育の提供、人材管理のトレーニングが必要不可欠な時代である。

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怒られる大人たちとパワハラ対策

「怒られないよう、頑張ります」
「怒られてばかりで辛い…」

企業研修や社員カウンセリングをしていると、こんな言葉が漏れ出てくることがある。口に出しては言わなくても、上司や同僚、クライアントから「怒られないように」という感覚を覚えながら、ときには、そのことに怯えながら仕事をしている大人も実は少なくない。

職場における様々な状況下で、力関係を使って他者に恐怖感を与えることは、ハラスメントである。残念ながら今の日本の社会ではいまだに根強く残っているものであり、パワーハラスメント問題の中には、「怒られる大人たち」が実存している。

大人として、社会人として「怒られる」とは、どういうことなのか?と改めて思う。時折テレビで「最近怒られたのはいつですか?」と成人男性に街頭インタビューしているのを見かけるが、恐らくそういった質問が放送ネタになるのも日本独特な風潮である。

私たちは、子供の頃から何かにつけ「怒られて」育ってきたように思っているのではないか。本来「やってはいけないこと」に対して「叱る」という躾の一部だったとは言え、怒られる経験と記憶を積み重ねて育ってしまったような。

そもそも、より良い方法を教示する叱る、と怒りの感情を出す怒る、はまったく違う行動だ。しかし、その違いは、当事者同士が体感的にどう経験したかでしかわかり得ないのかも知れない。その継続的な経験から、いつしか無意識に、怒られることを避けるための思考と行動をするようになる場合もあるだろう。もしくは、何かのきっかけから、怒る側に周ってしまうことで、今までの怒られる経験と記憶が、他人に対して爆発するような現状も引き起こす。

パワーハラスメントの状況を作り出すのは、怒る大人、怒られる大人、両方の潜在的なメンタリティが関係している。何が(誰が)正しくて、何が(誰が)間違っているのか。その追求だけに支配されてしまうあまり、人としての大事な叡智を見失ってはいないだろうか。私たちには「お互いにとってより良い方法を共有する」ための叡智がある。それは、言葉、態度、在り方そのものを磨いていくことであり、それが働き方改革になる。

惜しまれて亡くなった野球界のレジェンド、衣笠祥雄さんは有名な言葉を残された。「野次と罵声では、人は育たない」と。

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5月病対策、やることは3つ!

5月といえば新緑が目にも優しいベストシーズンの一つだが、働く人たちの間で感情や体調にブレが起こりやすい時期でもある。新年度を境にした環境的な変化が原因とされる適応障害の症状は、「五月病」と称されることも多い。また、環境の変化を体験するのは、新入社員だけではなく、新入社員を迎える側も同じなのだ。だからこそ、この時期は改めて社員幸福度に目を向け、社員エンゲージメントを高める時期として、捉えるのも良いのではないだろうか。

適応障害は、やる気があり前向きな人ほど陥りやすいという。頑張りすぎて、上手にストレスマネージメントが出来なかったり、高過ぎる理想と現実のギャップに悩む傾向があるからだろう。前者(ここでは「ストレス型」と呼ぶ)であれば、まずなにより自分に合ったストレス対策方法を探していくことである。人や状況によって方法も効果も異なるものなので、焦らずに時間を掛けてでも自分に合う方法を選び、改善したい。社員向けのストレスマネジメント研修やカウンセリングを積極的に取り入れている企業も増えている。自分なりのストレス対処方法を見付ければ、これからのワークライフで幾度も訪れる環境の変化やストレスに対する対処に長期的に役立てられる。

後者(「現実とのギャップ型」と呼ぶ)の場合、深刻化すれば会社を辞める所まで行きつきかねない。確かに、12ヶ月も経てば希望に満ちて入社した職場の粗が目につき、隣の芝が青く見え始める。最近の売手市場傾向の下では人材確保のために会社が実態を美化して「良い顔を作る」ことも少なくなく、ギャップを目の当たりにすることもあるだろう。「石の上にも」に後に続くのが「3年」でなく「3ヶ月」の世代にとっては、転職が頭に浮かぶことにもつながる。無論、自身が向かうべき方向を確立しているのであれば、短時間で見切りを付けるのは双方にとって好ましいが、社会経験の浅い社員が「一時の気の迷い」で退社に至るのは好ましいことではない。そうした社員をどう教育するのかで、悩みを抱える先輩社員が生まれてしまっては本末転倒でもある。

いずれのケースでも、その予防と対策の肝は適切なコミュニケーションの継続である。予兆の検知を含めて部下や同僚の心の揺らぎを察知したり、そうした揺らぎを抑えるために欠かせない職場でのコミュニケーションと相互サポート、その活性化を担うのはやはりグループのリーダー、マネージャーだ。

「ストレス型」でも「現実とのギャップ型」でも、大切なことは、各社員が「仕事をしている自分は、会社という組織や社会の一部である」ということを認識していることである。前者であれば、自身はあくまで「組織全体の中の一部」であり、自分一人が責任を抱え込みすぎる必要はないと気付けば、肩の力が抜け自分なりの関わり方が見つけやすくなるはずだ。後者にとっても、組織への所属が意識されれば、その組織に適合することが自身にもプラスであり、適合するスキルが今後のキャリアでも重要であると気付くことにつながるであろう。どちらも、「自分が達成すること」よりも、「どうしたら自分が身を置く組織を適切に回すことができるか?」というように、周囲と調和して仕事を進める意識を持ってもらうことが重要だ。

そうした職場環境は新年度限定ではなく、企業文化として構築・定着させていくためにすることはシンプルに3つのみ!

1.会社の経営理念やグループの方針の浸透
2.リーダー、マネージャー層の育成
3.ストレスマネージメントの啓蒙

こうした社員エンゲージメントを高めていく取り組みは、会社そのものを健康経営に導いていく。

ゴールデンウィークの過ごし方で働き方チェック

昭和23年に祝日法が施行されたことによって、4月末から5月初旬までの1週間に祝日が集中して連休となった。この期間がゴールデンウィークと呼ばれるようになった説のひとつは、日本映画に関わるもの。1951年のゴールデンウィーク、映画「自由学校」が正月や盆休みの時期を超えて当時最高の売り上げを記録で大ヒットしたことから、この時期に映画プロモーションを強化するための宣伝コピーとして生まれたという説。由来は何であれ、春の連休の名称となった「ゴールデンウィーク」は、和製英語の造語であるが、日本人旅行客が多く訪れるハワイなどの環境地では、英語でもGolden Weekで通じるほど定着している。ちなみに今でもNHKや一部のメディアでは、もともとは映画業界の宣伝コピーだったということから、ゴールデンウィークという言葉を使わず「春の大型連休」と表現しているという。

2018年のゴールデンウォークは、9連休、10連休にもできる並び。これだけの連休となったとして、果たして日本の会社社会は心から「長期休暇」を楽しめる状況になっているのだろうか。そもそも、日本には「バカンス・長期休暇」を取り慣れていない、取りにくいという労働スタイルや習慣があった。

働き方改革の一環として、有給休暇の消化を推進している、と声高に主張する企業もあるが、そもそも有給休暇の消化を「会社として推奨する」考え自体が疑問である。休暇は権利と考える欧米スタイルと、休暇にやましさと申し訳なさを感じる日本スタイルの違いは大きい。有給は、自分の心身の健康や自己の幸福のために使うものなのか、「イザというとき、やむに已まれぬ状況のとき」に取っておくものなのか。

そして、理解しておくべきなのは、日本の祝祭日の数は世界一多いという事実でもある。有給消化率は50%でも10日、合計27日もあり、世界第6位。このまま有給消化率達成100%を目指せば、フランスに次いで37日の世界第2位まで浮上する。しかし、今の日本の働き方のままでの休日の多さでは、生産性は落ちるしかない。

社員がのびのびと長期休暇を楽しめる会社は、それができる基盤が構築されているのだ。ただ休めて浮かれているのはない、働くときには働いているのだ。さらには、誰かが休むと会社や同僚に迷惑がかかる、と当たり前に思わせてしまう職場環境も根底から改革が必要だ。担当者でなければわからない書類、担当者がいなければ何も動かない職場、担当者が休んでいると顧客を失うようなプロジェクトは、会社という組織そのものが機能していないことの現れとも言える。現状として、ゴールデンウィークや長期休暇を、社員にどう過ごさせることができているか、そこにも働き方改革を成功させるヒントがある。

有意義なバカンスを楽しめるマインドを持つ優秀社員、その優秀社員が休暇をとっても、組織のサポートできて潤滑に機能し、業績を上げつづけられる職場環境は理想とするところである。あなたのゴールデンウィークは、何に、誰に、支えられているのだろうか?

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ハラハラ…って、それハラスメント?

職場におけるハラスメント、その種類は増殖を続けている。一説には40種類を超えるとも言われ、「それ、ハラスメントです」と迫る行為をさす「ハラハラ」なるややこしいものまである。

ハラハラ得体の知れないものは、何であれ不気味である。

そうした中でも、世間一般に良く知られているのは、昨今のメディアでも多くのニュースになっているセクハラ、そしてパワハラであろう。異性さえ居れば起こり得るセクハラ同様、職場等での上下関係があれば起こり得るパワハラはどこでも発生し得るものだ。


NHK『首都圏ネットワーク』にハラスメント対策専門家としてカルチャリアが登場

厚労省による平成28年の調査では、日本企業の36%、従業員の32%がパワハラの経験があると回答している。およそ1/3の企業や社員が経験するということは、すでに「例外的」とは言えないレベルである。こうした背景から、厚労省が「あかるい職場応援団」という対策サイトを作成、提供しているほどである。

ハラスメントの判断の難しい点は、ある行動がハラスメントにあたるかどうかが受ける側の感じ方に依存し、加害者側の意図とは必ずしも一致しないことにもある。つまり、2人以上の人間が居れば必然である価値基準の違いやコミュニケーションの不完全性がその温床となる訳だ。有能な上司が得てして、ハラスメントの原因となることも少なくない。

個人の価値基準やコミュニケーションのギャップの背景として考えられるうちのひとつに、世代間格差がある。今ではセクハラど真ん中になる、男性上司の女性へのボディタッチが「挨拶」として横行していたような時代の部下の育て方は、今や「いやがらせ」と捉えかねない。多くの親が子供達の言動の理解に苦慮するように、世の中の環境と価値観は常に変化しており、それは職場も例外ではない。さらに、コミュニケーションのギャップは世代間に限らず、対等に近い関係でも起こり得る。なんら「いじめ」と変わらないパワハラは、上司と部下の間だけのことではない。

多くの場合、企業がパワハラ対策に乗り出すのは、『いざ実際に事が起きた時』が多い。上下関係が良好で、各社員が気持ち良く働けている部署ではパワハラは起こらない。もちろん、ハラハラも起こりえない。つまりハラスメントの有無は、管理職のマネジメント力のバロメーターであり、社員幸福度や社員エンゲージメント向上への取り組みの積み重ねである。これからの時代、パワハラの源泉となる価値基準の相違は、人との付き合い方や仕事への思いなどを含めた各社員の生き方の多様性、つまりダイバーシティーへの許容度を示すことにもなる。

社員は、企業の資産そのものである。高まる多様性の時代、働き方改革の推進とともに、一過性に終わらないハラスメントフリー対策を会社文化に組み込むことは重要なことである。

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新入社員に読ませたい本3冊【女性社員編】

今年、日本で新社会人となった女性たちが足を踏み入れたのは、世界144か国を対象にした男女格差ランキングで114位に位置づけられる国の社会であり、会社である。その良し悪しを語る前に、それが今日の事実なのだ。そこに落胆するのか、無限の可能性が隠れていると見るのかで、未来は変わってくる。先週のコラム「新入社員に読ませたい本3冊【男性社員編】」に続いて、今週は【女性社員編】の書籍をピックアップ。

1、「成功への情熱」稲盛和夫著
日本のみならず、世界的にも経営の神様として知られる稲盛和夫氏の著書は、1冊は読んでおくことをお勧めしたい本である。なぜなら、自分の会社、自分の会社の顧客会社、さらには今後何らかのご縁でつながるかもしれない会社、その経営者たちが師とあおぐ稲盛氏の経営哲学の存在を知っておくことは、社会人として有益な情報になることは間違いない。「成功への情熱」は、経営者でなくとも、人としての生き方、他者を思いやる心、そして明日も頑張れる気持ちを教えてくれる1冊。

2、「思考の整理学」外山滋比古著
帯には東大・京大で一番読まれた本とある、31年間で113刷のロングベストセラー書。これからの時代、年齢性別に関わらず「AI」という寝なくても元気、癒されなくても気にしない、というスバ抜けて仕事ができる同僚に仕事を奪われないために、「自ら考える力」という最強のツールが必要となる。だからこそ、会社でも人生でも、常にすべてを手取り足取り教えてくれる人がいて、わかりやすい教科書があって当然、という思考と行動の癖がついてしまう前に読んでおきたい本である。

3、「勉強の哲学 来るべきバカのために」千葉雅也著
前出の「思考の整理学」が東大・京大で一番読まれた本なら、こちらは東大・京大で今1番読まれている本と帯にある。「勉強とは、これまでの自分の自己破壊であり、別の考え方をする環境へ引っ越すこと。新たな環境のノリに入ることである」という新概念から、「深い勉強」という人生革命にもつながる原理と実践に導いてくれる。新入社員として会社という新しい環境にいるということは、まさに新たな環境のノリに入ったということなのだから。

そして、番外編のもう1冊はこちら。

番外編:「貴様いつまで女子でいるつもりだ問題」ジェーン・スー著
先輩たちの憎めないメンタリティとバイタリティの中に思い切って飛び込んでみる決意の書!そこから20代、30代、40代、たぶん50代以降も含めた女性の働き方と生き方の技とパワーに触れることができる本。1年後にはあっという間に先輩社員となる自分自身が、どんな先輩になっていくのか、なりたいのか。今の自分を優しい目で見つめ直すのにお勧め。パワハラ、セクハラを受けない与えない知恵のひとつもつく…かも知れない。

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新入社員に読ませたい本3冊【男性社員編】

新卒社員が一斉に社会に出るこの時期、上司として新入社員に推奨したい書籍3選を、今週は男性社員編とイメージして挙げてみた。
まずはベスト・オブ・ベストセラーの「鉄板」でもあり、すでに読まれている方も多いだろう。もしまだであれば、アマゾンなどレビューをご参照頂きたい。

1、「道をひらく」松下幸之助著
日本に名経営者多しといえど「経営の神様」とまで呼ばれるのは稲盛和夫氏と松下幸之助氏であろう。新入社員にも早いうちに神様達の言葉には触れておいてもらいたい。経営者向け著書が多い稲盛氏に比べると、松下氏の著書は新人向けとしても選びやすく、他にも「人生と仕事について知っておいてほしいこと」「若さに贈る」等もお勧めである。

2、「7つの習慣」スティーブン・コヴィー著
アメリカでのリサーチ結果からまとめられた7つの成功ファクターは、日本を含めグローバルに、また企業の内外を問わず、様々な局面で通用する。ここで示される習慣を部下が身につけたくれたら、上司の仕事はとても楽になるだろう。

3、「金持ち父さん貧乏父さん」ロバート・キヨサキ著
キーメッセージとも言える「キャッシュフロークワドララント」は、あらゆるビジネスマンに是非とも知っておいてもらいたいコンセプトだ。会社に勤務する上司としては、副業、ボランティアなど会社以外の活動の選択肢に触れさせるのは若干抵抗感を持つ向きもあるかもしれないが、社員が経験と視野を広げ成長することは、企業に属して働くにしても役に立つはずであるし、企業にもプラスになる。また働きながら投資について興味を持って取り組むことのメリットも小さくない。

そして最後にビジネス本以外の番外編として、もう1冊。

番外編:「龍馬がゆく」司馬遼太郎著
経営者、ビジネスリーダーには、歴史から学び、ヒントを得ることを好む人が多い。歴史小説家といえば、やはり司馬氏は外せない。幕末期を駆け抜けた龍馬の生き様は、これから社会での活躍の期待される若者へ良い刺激を与えるであろう。8巻に及ぶ長編なので、比較的時間に余裕のある年次の浅い時期に読んでおきたい。ついでながら、上司ご自身にはリーダーシップと戦略への示唆に富んだ「坂の上の雲」がお勧めである。

ビジネス書であるかないかを問わず、上記のような良書が、新入社員とその先輩社員のしあわせな働き方への示唆を与え、一助となることを願って止まない。

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新入社員教育はバカボンのパパに聞くのだ

厚生労働省の調査では、新卒社員の約15%が1年以内に、約33%が3年以内に離職するという結果が出ている。手放したくないからこその、新入社員教育や研修であるが、キーワード検索では、軒並み「社会人としての基礎」「コミュニケーション能力」というコピーが現れ、笑顔で拳を掲げるスーツ姿の若者の写真が出てくる。同じすぎて恐ろしくもなるが、今の日本、会社は、そしてあなた自身は新入社員に何を望んでいるだろうか。望みは伝わり、受け止められるのだろうか。

指導や教育の過程では、義務や責任感から「これが正しいやり方、考え方」「うちのやり方」と決め付け、押し付けをしてしまいがちにもなる。さらには相手に理想通りの反応や理解を求めすぎることにもなり、双方の信頼関係を構築できないことにもなる。

これから新入社員を迎える側にある人にこそ、読んでいただきたいおすすめの一冊を選んでみた。

『バカボンのパパと読む老子』ドリアン助川著 角川文庫

天才赤塚不二夫氏のクリエイションである「バカボンのパパ」はその生きざま自体が禅的要素が高いことでも良く知られているが、何よりも、天才バカボン世代は新入社員ではなく、経営者や管理職の世代であり、この本はまさに先輩社員向けだ。新しきを受け入れ、成熟し、さらに進化を導いていく立場にある人のための本である。

『バカボンのパパと読む老子』では、老子の説いた「道(タオイズム)」をバカボンのパパの言葉で、日常実践レベルにして解説されている。漢詩、日本語、パパ語の3段階に訳され、分かりやすいだけでなく、タリラリラーンと脳に入ってくる心地よさ。

【是を以って聖人は方にして而も割かず、廉にして而も劌らず、直にして而も肆ならず、光ありて而も耀かず】

こんなややこしいことを、バカボンのパパは、「どえらい人は自分の判断が正しいと思っても他人の善し悪しを決めたりせず、頭の回転が速くてもそのことで他人をいじめたりしないのだ。まっすぐな考えを持っていても他人にその通りにしろとは言わず、知恵があってもそれをひけらかそうとしないので、自分は特にえらそうに見えないのだ。これでいいのだ」と説いてしまう。信頼関係の構築とコミュニケーションの基盤はまさにここにある。

「なんでこんなこともできないの?」「言ってる意味わかる?」「ちゃんと考えた?」「前にも言ったよね」「使えないなあ」、これらは職場で言われてやる気をなくした言葉集としてインターネットに載っている。こんな言葉は上司にも部下にも必要ない。なぜならば…

師曰く「わしは他人をジャッジしないのだ」

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感情労働の職場環境と社員幸福度を守るには

最近、メディアでもよく聞くようになってきた「感情労働」とそこから生まれる「感情疲労」。実は10年以上前から、感情労働は頭脳労働や肉体労働に加わる「労働ジャンル」として認識されている。

感情労働を代表するキャリアは、いわゆる接客業のプロたちであり、エアラインのCAやグランドスタッフ、コールセンタースタッフ、エンターテイメント施設のスタッフ、飲食や販売店員、医療関係者など、多岐にわたる。アメリカの社会学者、アーリー.R.ホックシールド氏がによって、感情の抑制や忍耐を強いられることが職務要素となっている業種を、Emotional Labor(感情労働)と定義されたものである。

そして、感情労働から生まれる「感情疲労」は、目を向けられることが少ないだけでなく、「感情労働で疲労すること」自体に対する偏見があるのも事実である。

日本ならではのおもてなし精神や、今でもなぜか日本人の心の奥底に潜む「お客様は神様」は、利他の精神の現れとなる一方で、ボーダーラインが崩れれば一瞬で闇をも生む。我慢や辛抱が美徳やプロとして在る姿とされがちな状況で無理な感情抑制が続き、抑制した感情を自己コントロールできなくなったり、自身の感情を麻痺させて乗り切る癖がつくことで、感情そのものが疲弊してしまう。

「感情労働で、心の切り売りをして疲弊し傷つく人たちが多くいる」という記事も目にした。本来なら、感情労働の成果と功績は、サービスを受ける人も、提供する人も、湧いてくる感謝や喜びの感情を共有できることの醍醐味であるはず。しかし、いつしか感情労働を「演技の強要」にしてしまったのではないだろうか。

ホックシールド氏は、感情労働の従事者には、意図的に表層演技(表情や声のトーンや話し方を作る)をするだけでなく、無意識的に深層演技(自身の潜在的な感情として自ら思い込ませる)をするようになる人も多くいるとしている。自身の感情を無理やりコントロールしてしまう癖が、そのうち感情や感覚の麻痺を起こし、心身のストレスや疲労すら感じなくさせてしまう。そこから、鬱症状などの精神疾患を招く場合もある。心のこもった接客という本来なら、誰にとってもプラスとなるはずのものが、大きくマイナスに作用してしまうケースだ。

こうした感情疲労は、どのような業種にも起こり得る。職場での上司、クライアント、もしくは同僚への対応や配慮に過剰なプレッシャーやストレスを課せられている人、感じている人は多いはずである。

社会人としての常識ある対応、大人の対応、お客様だからこその対応、それができてこそのプロ仕事ではある。だからこそ、自分自身のすべての五感+六感を駆使して、常に「自分の感情、感覚、体調」に目を向けることも大事である。感情疲労を重要視している多くの企業では、人事の評価・報酬を管理するチームとは別に社員がオープンに相談できるカウンセリングや相談先を設け、社員の心のケアや社員幸福度に向き合っている。

感情労働とされる業種や業務は、人を豊かに幸せにする価値ある仕事である。その業務に就く人にこそ、恵まれた職場環境が確保されるべきである。

 

イノベーションは職場環境から生まれる

イノベーションを産むのは常に人である。但し、エジソンのような人材が居れば別として、人がイノベーティブとなりやすい環境を用意することが条件となる。種をまくだけでなく、芽を出し幹が育つような土壌と環境を整えてこそ花を咲かせることが期待出来るのだ。

シリコンバレーの先進企業をはじめ、イノベーションを求める多くの会社では、その規模を問わず、働く人の創造性向上をもたらすために、人にストレスがかからず、コミュニケーションが活性化しやすうような配意と整理がされた職場の確保がいまや常識となりつつある。社員用のカフェテリアやスポーツ施設といった福利厚生的なものに目がいきがちだか、そうした施設設置は付随的であり、あくまで資金的余裕のある企業にとってのオプションと考え、まず、普段の業務を遂行するオフィス環境を整備することが、イノベーション誘発へ大切なステップとなろう。

環境とイノベーションの関係を理解し、花を咲かせ続ける企業の一つとして、ダイソンを取り上げたい。いまや掃除機の主流とも言えるサイクロン式のパイオニアであり、今でも真っ先に思い浮かぶブランドでもあるダイソン、その後も羽根のない扇風機やヘアドライヤーといった画期的な製品を生み出し続ける。昨年の売上が前年比40%増と好調な業績も手伝ってか、17年9月には電池から車体までの一括生産に拠るEV参入まで表明している。

競合他社と一線を画す高い機能と斬新なデザインの製品力を支えるのは、本社で社員の1/3を占めるエンジニアだが、そのエンジニアの創発を促すために工夫が込められた職場環境に競争力の源泉がありそうだ。そのキーワードは「オープン」「シナジー」「スペース」の3つ。

まずはオープンな空間の確保。以前の生産工場を転用したオフィスには、エンジニアのデスクが並ぶが、仕切りやパーティションがなく、それぞれのエンジニアがどこにいて、互いにやっていることがよく分かるようにしている。相談などが必要な時には、すぐに目当ての人をつかまえて、キャスター付きのホワイトボードを持ち込んでその場でディスカッションすることが出来る。

そして、関連する製品を開発するグループ同士の距離をなるべく近づけて配置するなど、チームの連携を産み出しやすい環境にも配慮している。例えば、主力の掃除機ではデザイン、製造、検査の各チームを寄せて配置して機能間の連携を取りやすくすると共に、近くにロボット掃除機の開発部隊も置き、相互に関連するチーム間のシナジーを産みやすい。

さらに、エンジニア同士のコミュニケーション活性化を図るために物理的空きスペースを用意する。オフィスの至るところに設けられた空間では、社員が立ち話したり、そのまま議論に入ったりして、簡単な打ち合わせやブレストをきっかけに面白いアイデアが生まれることも多いという。決められた時間や場所の制限されずに、その場で起こるコミュニケーションがイノベーションを誘発するのであろう。


無論、ハードだけでなくソフトも重要だ。創業者ダイソン氏が今でも前線に立って開発を引っ張るというダイソン、日本ではかっての本田やソニー、最近ではバルミューダなどを彷彿させまいか。ダイソン氏は日本人のテクノロジーに対する理解や姿勢をリスペクトしていることで、日本法人の優位性が高く、日本の社員にとってポジティブに働いているという。日本が技術立国としリスペクトの対象となり続けるために、トップが率先して示す創造性を重視する視線と、それを促す環境の整備がイノベーションの源泉となり、事業成長に資することを改めて心に留めたい。