パワハラのない会社はここが違う

 人が2人以上いれば、どこの職場でも、誰にでも起こり得るのがパワハラである。パワーハラスメントは2001年に日本で造られた和製英語だ。アメリカでは、「Abuse of Authority(職権乱用・職権を使った暴力)」「Bullying(いじめ)」と表現される。そう、間違いなく、暴力やいじめの領域なのである。

暴走する権力やいじめ、ハラスメントが起こる職場には特徴がある。コミュニケーションの欠如は言うまでもないが、社員幸福度や社員エンゲージメントは徹底的に低い。もしくは社員や部署によっての高低差が著しい。

そして、ハラスメントに対する理解と認識度の違いは最も危険である。会社内で、経営者を含む全社員が、「ハラスメントとよぶ行為」を同じ内容、同じ認識で共有しているかどうかは、企業そのものの価値も変えるほどである。ハラスメント対応は、時間や資金はもちろん、関わる社員の疲弊、さらには会社の信用そのものを失墜させてしまうのだ。

ハラスメントの未然防止、起きたときの対処を的確に行うためには、全社体勢で取り組む社員教育、社員幸福度や社員エンゲージメント向上のために会社が取り組む姿勢などが求められる。ハラスメントの境界線を明確に作れば、会社も社員も守られる。

日本では、労働局に持ち込まれる相談件数は年間100万件を超え、そのうちのトップはハラスメントだという。2017年では約23万件と報告されているが、外部に相談しないケースを入れればその数はさらに増える。そもそも日本ではこの種の「相談」が形式的に終わってしまう傾向がある。

相談とカウンセリングは大きく違い、カウンセリングでは問題の起因と対応策をカウンセラーの一方的なアドバイスではなく、相談者本人が個人の人生の設計図を見直し立て直す機会として捉える。アメリカでは社内に社員が駆け込めるカウンセリングがセッティングされていたり、外部カウンセラーとつなげるシステムを設けている企業も増えている。そもそもカウンセリングに行くことは隠すことではなく、それどころか「優秀なカウンセラー」を抱えていることは成功のステータスともされている。カウンセリングに対する偏見や概念を変えていくことも、これからは必要とされていくだろう。

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奥山由実子のパワハラ撲滅トーク『ハラスメントセミナー』

 

 

 

 

解雇は悪なのか⁈

インターネット知恵袋に『40歳前後で会社から解雇され、そこから這い上がった人はいますか?』という質問が上がっていた。この質問には『このままでは終わりたくないし、必ず辞めた会社を見返してやろうと思って頑張ってます』とも続いている。

この質問を見るだけでも、日本の解雇の実情が垣間見られる。納得がいかない、理不尽、自分の年齢での解雇に未来を見出せない、地の底に落とされた、悪いのは会社…等々。

解雇は悪なのか。もちろん解雇理由にはさまざまあり、社員の犯罪行為等があった場合は別として、本来ならば、する側にとっても、される側にとっても、未来につながるビジネス戦略であるべきなのだ。

転職、解雇に対するマイナスイメージが強いのは、一人の君主に生涯遣えるサムライ文化の名残もあるとはいえ、国策として働き方改革を唱える国にあっては、企業文化の根底からイメージも考え方も一新すべきである。

以前に比べ、転職は日本でも十分に受け入れられるようになってきた。次は解雇に対する偏見や方法が見直されなければならない。解雇した社員に恨みを買うものであってはならないのである。

 恨み、つらみの伴わない解雇などありえない、という人も多いのではないだろうか。それはどちらかの行動が一方的であったり、双方の理解や見解が完全にずれているから起こることであり、解雇通告は一瞬であっても、解雇に至るまでの経緯や成すべきことは長きにわたって構築されるものなのだ。職場環境や働き方の見直し、社内のハラスメントやコミュニケーション事情の把握なども、理不尽で不必要な解雇を減らし、解雇があった場合でもその影響は小さく抑えるための戦略となる。

 恨まれる解雇で会社の未来も人の未来も潰すのか、ビジネス戦略としての解雇で会社の未来を守り、人を未来ある転職に導くのか。経営者も人事部も、新しい概念と知識と、さらには適格な方法を身に着けておくことが求められている。別れの後にお互いの未来が見える方法、『明るい解雇』は現実として可能なのだ。

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働き方法案とワークライフインテグレーション

ワークライフバランスという言葉があるが、もはやこの表現自体が古いのではないだろうか。これからは、ワークライフインテグレーションがしっくりくる。仕事とプライベートを両立させるというワークライフバランスの考え方から、仕事もプライベートも同じように人生の一部であるという考え方に発展させるステージに来ているのだ。

ワークライフバランスは、言葉としても理想のコンセプトとしても一気に日本に広がったものの、単純に「時短」や「テレワーク」の導入が、ワークライフバランスの達成といったような気風のまま停滞している感がある。仕事(ワーク)と人生(ライフ)はそもそも対極にあるとするのが根本にあり、それらをバランスよくこなすという考えでは、日本特有の企業習慣や、日本人の働き方の傾向においては浸透に時間がかかりすぎるのだ。すでにITテクノロジーが進化している日本でも、未だテレワークの浸透率はたった16%にすぎない。

シリコンバレーではすでに、ワークとライフはバランスではなく、一体化するものだという認識が広がっている。個人的な人間関係や仕事以外の時間を有効に使う姿勢で結果的に仕事に効果を出せる社員の方が、有望とみなされる。

ワークライフインテグレーションの成功には、個人の思考や行動の自主性の高さはもちろん、雇用主側の管理能力や人事評価能力も求められる。これまでのように、勤務場所や時間が特定されるスタイルでは、ワークライフインテグレーションを習慣化できる可能性のある社員たちを育てることも阻まれる。たとえば、会社業績に大きな影響を与えるとされている社員エンゲージメントも、この新しいムーブメントによってさらに高められるのではないか。

自主性の高さやクリエイティブな発想を生むのは、自分自身の人生の質を高めて、幸せになりたいという純粋な欲望だ。そうしたプライベートライフと仕事を、相互サポートで成り立つものとして捉えられる発想はワークライフインテグレーションの基盤である。

働き方改革法案が可決した。長時間労働の是正をするための時間外労働に罰則付きの上限規則が設けられ、その一方で高収入の一部専門職を労働時間の規制外とする高度プロフェッショナル制度が導入される。本当の改革は、実際の職場に浸透されてから始まる。

そのきっかけとして、ワークライフインテグレーションという働き方コンセプトに目を向けてみてはどうだろう。果たして、あなたの職場には浸透するのか、浸透させることができるのか、それとも、まだ古い習慣や企業文化が邪魔をするのか。

*7月4日ヒューマンキャピタルセミナー「明るい解雇!」
 カルチャリア代表奥山由実子が登壇!
 ヒューマンキャピタルは7月4日~6日まで東京国際フォーラムで開催。
 カルチャリアの出展ブースにも是非お立ち寄りください。

W杯の歓喜を支えるダイバーシティへの理解

W杯で日本全土が盛り上がっている。W杯を開催する国際サッカー連盟(FIFA)は差別撲滅を掲げているにも関わらず、ロシア国内ではW杯に関わる人種差別や性差別の言動が取りざたされたという毎日新聞の記事を読んだ。

同記事では、旧ソ連時代からロシアは多民族文化ではあったが、保守的な価値観や白人至上主義の風潮が一般的に強いとされており、社会では性的マイノリティの人権が尊重されているとは言い難いと指摘している。

実際に、開幕前にはロシアの女性議員の人種偏見とも取られかねない問題発言が物議をかもし、開幕セレモニーで同性愛擁護派のアーティストがカメラの前で中指を立てるという行動に出て、これは同性愛者に抑圧的な態度を示しているプーチン政権を批判したのではないかとも憶測されている。

華やかな国際スポーツの世界にも、根深い差別問題は見え隠れする。日本の私たちの日常では、職場では、どうなのだろう。小さな差別の種はどこにでも落ちているものであり、その種を早期に見つけ取り組むことは、会社の未来を守ることにもつながる。そして誰が最初の勇気を持つのか。

これからの日本の働き方改革におけるダイバーシティの理解と行動は欠かせないものではあるが、会社や経営陣は危機感を持ってダイバーシティへの取り組みをしているだろうか。それは、人種、文化、思想、そして性的な違いを持つ人々への理解を広げるという範囲では終わらない。パワハラやセクハラのない職場環境の土台が作れるレベルの、ダイバーシティ時代に合ったコミュニケーション構築が真に求められる。これからの時代のコミュニケーションは完全にステージをあげたものであり、まさにダイバーシティという人間愛を理解してこそ、可能となる。

W杯の歓喜を支えるのが、人種、文化、性別の壁を越えたとてつもなく大きな人間愛であるように。

*7月4日ヒューマンキャピタルセミナー「明るい解雇!」
 カルチャリア代表奥山由実子が登壇いたします!

◎コラム「ダイバーシティの壁のムコウ
◎記事リンク「人種、性別に独自価値 厳しい差別の断罪」  

経済的損失7700憶円 を救うコミュニケーション

NHK総合テレビの番組「ガッテン!」(201866日放送分)、『筋肉&血管を守る!健康長寿 最高条件』と題された特集の中で、人間が健康に長生きするためには、人との繋がりが影響するというリサーチ結果が紹介された。

日本の職場での予約制相談窓口での悩みのトップは、人間関係である。人と人とをつなぐものこそコミュニケーションであり、そもそもコミュニケーションとは何か、潤滑なコミュニケーションがもたらす恩恵とは何か、改めて再考してみることも大事なのではないか。

コミュニケーションの目的は?と聞けば、誰もが瞬時に「伝えること」「分かり合うこと」などの答えを簡単に出す。では、恩恵は何か?すべてのものごとには、行動の先に恩恵がある。

今回の「ガッテン」では、カリフォルニア大学ロサンゼルス校のスティーブ・コール教授による「親切心と行動が健康長寿に関連する」という実験結果を紹介していた。コール教授は、人と人が直接コミュニケーションを取る、という行為が免疫細胞の炎症モードを減らす究極の条件だと述べている。

さらに、単に人とコミュニケーションを取ることだけでなく、親切であるという行為が人間の免疫力を変えるという。教授は150人の被験者に対して「毎日誰かに親切をして、免疫力を測定する」というユニークな実験を行った。1か月間の実験の結果、13回他人に親切にした人の免疫細胞は炎症反応が低下したことがわかった。

免疫細胞の炎症反応とは、体内で病原菌を攻撃するときに免疫細胞が炎症モードに切り替わることで、この炎症モードが長期にわたると、病原体に対してのみでなく自身の細胞にまで攻撃が及ぶようになる。そのため、筋線維が委縮し、血管など全身で衰えが起こり、脳閉塞、心筋梗塞、動脈硬化などの発症リスクが高まる。

教授はこの結果を、人類の経過してきた進化の過程で「お互いが助け合って生き残った」という歴史が関係していると解説した。人は孤独を感じたときにも免疫細胞が炎症モードになり、それが長期化することで心身に悪影響が及ぶのだと。

厚生労働省の調査では、平成26年に医療機関を受療したうつ病・躁うつ病の患者数は112万人。医療機関に行ってない人数を加えればさらに増える。

会社経営としての健康も考えれば、社内に一人休職者が出ることでの会社損害は、その社員の年収の3倍と言われている。さらには周りのフォロー等でのコストもかかる。メンタル疾患による国の経済的損失(2010年度)は7700憶円、自殺を含めれば27000憶円という宇宙的な数字となる。

日本人は、思いやりという美徳を持って生まれた国民と言われてきたのではなかったか。単に会話はしている、間違いのない情報伝達さえできれば良い、というだけでコミュニケーションが取れていると判断してしまうレベルを超えて、真の優しさも付随した上質のコミュニケーションの重要性と価値に注目するときが来ている。

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ダイバーシティ時代のハラスメント対策

ダイバーシティーの一角でもある働く者の多国籍化、日本でも確実に進みつつある時代だからこそ、考えて行かなければならないのは外国人雇用者に対するハラスメント予防対策である。

たとえばベトナム人労働者は、現在の日本での就職者数や将来の働き手となる留学生の数を見ると、総数ではすでに中国に続く2位、増加率も最高位グループに属している。その背景には、1億に迫る人口を抱えるベトナムの発展ステージが、先進国への労働者供給に適した段階にあることもあるが、日本とベトナムの間に親和性が高いことも挙げられ、今後もその存在感は増すと考えられる。

外国人技術者の雇用促進を目的として技能研修生制度の普及も進んでいるが、そこでの主役はベトナム人である。一部の心なき実施機関の犠牲となり、入国後に行方不明になったり、“不良外人”化する負の面が報道されることもあるものの、不可欠な戦力として期待されるケースが多い。

先日、研修生の送り出し機関の訪問で、候補生教育の場を視察する機会があった。まず印象的だったのは、礼儀正しさと元気さだ。質問に対してはきはきと返答する姿は、今の多くの日本人には失われたものを感じ、日本の職場に就いた時に浮いてしまうのではないかと心配になってしまうほどである。

日本の1970年代の経済成長期になぞられるベトナムの若者には、自身と生活水準の成長への期待と、先を行く国へのあこがれを抱くものも多い。そうした若者は、当時の日本人がそうであったように、儒教的価値観も手伝って上司や先輩からの多少厳しい指導への耐性を持ち合わせていることもあるだろう。とは言え、過去の日本の上下関係や、今の日本ではパワハラにあたるような言動の受容を彼らに甘えてはならない。

ハラスメント対策の本質は、相手の立場や意見を慮り、接点を広げることにある。それは、外国人雇用が増えるダイバーシティー時代のキーファクターでもある。良質なヒューマンパワーにもなり得る外国人はベトナム人に限らない。労働人口が減少する日本にとって、ハラスメントフリーの職場作りは必要不可欠となる。

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『乖離』という言葉と新入社員定着の鍵

ゴールデンウォークも、「5月病」も乗り越えた!
ようやく職場にも慣れてきた新人社員も多いだろう。中にはすでに仕事での頭角を表し、周りからも期待され始めた強者もあるかもしれない。そうなれば、新人定着への第1ステップはクリアだ。

次なる第2、第3と続くビジネスキャリアも、気を引き締めて着実に進化の階段を昇って行って欲しいものである。職場に慣れていくほどに、会社の良い所の発見も、また失望を感じる機会も増える。特に上司や先輩社員の働き方・働きぶりが、自身の将来の姿を想像させ、そこに違和感を感じるようになれば、見切りの早い昨今の若手社員の目は社外に向いてしまうだろう。

 そうした潜在的な離職要因の早期察知と対策は、大げさな施策を講じずとも、どんな職場でも出来ることがある。上司や先輩から率先してコミュニケーションを取っていくことだ。どんなに自主性の高い新人でも、最初のうちは自身が組織に溶け込めるかどうかに不安を覚えるもの。さらに、組織に加わって日の浅いうちは、会社の慣習自体に疑問を持ちやすい。しかし、新人の多くは、そうした不安や疑問を切り出すのにも迷いや遠慮を感じがちだ。だからこそ上の立場に立つ者から積極的にコミュニケーションを取って、そうした不安や疑問を伝える機会を作りたい。

ここでいうコミュニケーションとは、頻繁に「会話する」ということではない。コミュケーションの本来の目的は「共通・共有」である。会話や文章での言葉のやりとりは、コミュニケーション達成の手段のひとつであって、目的達成はその先に構築する「事実の共有」 である。

 「乖離」という言葉は、これまであまり聞きなれなかったが、昨今メディアを賑わせているニュースの当事者が「理解に乖離があった」という使い方をして以来、にわかに知られる言葉になった。意味は「そむきはなれること。結びつきがはなれること」というもので、まさに「結びつきがなければ、どんなに言葉を交わしていても、事実の共有は不可能で、コミュニケーションは成立しない」ということだ。

多忙な部署であれば、上司や先輩が新人にゆっくりと向き合う時間が作りにくいかもしれないが、「ありがとう」「ご苦労さん」等のちょっとした声掛けだけでも新人にとっては嬉しいものだ。また、メンター制度を設けていくことも有効で、新人のサポートと同時にメンターとなる先輩社員の成長につながる。

 折に触れ経営者が直接的ではなくとも、何らかの形で新入社員に対してのメッセージを伝えることも必要だ。日本電産の永守氏はかつて賞与給与時などに、社員一人一人に手紙を書いたという。社員数2,000人に対してである。社長からの直接のメッセージが社員の心の安定と動機付けにつながり組織の結束力を高めたのは言うまでもない。経営者の見ている未来を、肌で感じて共有できることは社員には心強いもので、そのインパクトは新人にはより大きいはずだ。

 新人定着への鍵も、会社全体の社員エンゲージメント向上も、「乖離」という言葉など無縁のコミュニケーションを構築していく取り組みが重要である。

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日本の20歳とスウェーデンの65歳の共通点?!

国際成人力調査というものがある。世界21か国の16歳~65歳を対象に、読解力、数的思考力、IT活用による問題解決力を調査する。2012年の同調査で日本の平均得点はトップとなり、「成人学力世界一」と認められた。

その一方で知的好奇心においては、著しく低いという結果が出た。知的好奇心とは、すなわち「新しいことを学びたい」という欲望である。例えば日本の20歳の知的好奇心は、スウェーデンの65歳と同レベルだという。スウェーデンの65歳が恐ろしいほどに新しいことを知りたがるのか、日本の20歳が老後並みの平穏を求めているのか。

ダイバーシティの時代、ハイテクノロジーの時代、すべてが急激な変貌を遂げる時代において、人生を豊かに生きる鍵は、常に書き換えられる情報や常識をいち早く学びとる好奇心と意欲、そして柔軟性なのではないだろうか。

年齢別の幸福度の推移調査においても、日本の平均は、十代に幸福度がピークとなり、60代まで一気に下降線をたどり、最低値に到達したまま再び上がることはなくそのまま継続する。これに対して欧米諸国では、下降線は40代くらいまでで、60代からは再度上昇していくとされている。

常に新しいことを知りたいと望む知的好奇心も同様で、本来年齢に左右されるものではなく、あくまで個人的な意思と生活環境が影響するのではないだろうか。2018年の世界幸福度ランキング1位であり、生涯学習の先進国のフィンランドは、成人の9割が「新しいことを学ぶのが好きだ」と答えている。幸福度ランキングの上位国の傾向として、成人学力と知的好奇心がバランス良く高いのである。

日本の企業でもようやく「社員幸福度の重要性」に注目されるようになった。そこが業績の向上、会社の生き残りにつながることが実証されてきたからだ。

職場環境は、社内のコミュニケーションは、さらには会社目標そのものが、社員の知的好奇心を刺激するレベルを常に保ちながら、進化もしていっているだろうか。

働き方改革を行っていく中で、人間の知的好奇心に注目することも、新しい取り組みとして効果が期待されるのではないだろうか。

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今年の幸福度ランキングを読み解く

今年も国連による世界幸福度ランキングの最新版が公表された。首位はノルウェーからフィンランドに入れ替わったが、デンマークやスイスといった常連組が今年も上位を占めている。今年の報告書には新たな特色があり、それは移民の幸福度にスポットが当てられていることだ。

全体的な傾向として、移民の幸福度と地元生まれの人の幸福度の相関性は非常に高い。フィンランドは移民の幸福度でもトップであり、同様にランキング上位の国は、移民の幸福度ランキングでも上位に入る。

そうした傾向の中でも例外なのが日本である。全体の順位では相変わらず54位と振るわないのだが、移民の幸福度に関しては25位と大幅に改善した。「ガラパゴス」的な日本に海外から移り住むのには、相応のストレスに堪える寛容性が要るとも思われるのだが、一度慣れてしまえばやはり日本は住みやすい国なのだろう。

実際、「一人当たりのGDP」「平均健康寿命」「社会的支援」「人生における選択の自由度」といった指標の大半では、上位国と日本のスコアに大きな差異はない。これに対して、顕著に劣るのが「政府や企業への信頼度」と「それ以外」である。政府への信頼度の低さは残念ながら誰も納得が行く所だろう。そして働く人と企業との関係における互いの信頼度には、構造的かつ継続的変化が影響していると考えられる。労働環境の観点から比較すると、フィンランドはじめランキング上位国はすべからく、年功序列や終身雇用もなく転職が容易、そして労働時間が短い。社会保障が手厚い一方で、労働者の自立度が高く、企業との対等な関係性が構築されている。働く側が自己責任の上でキャリアから労働時間まで選択する自由度が、ライフワークバランス向上を通して幸福度を高めることにもつながっているのではないだろうか。日本でも緩やかではあるがそうした素地は広がりつつあり、やはり働き方改革の下で、働き手の自立度が高まれば、上位国に近づけるだろう。

では、「それ以外」の源泉は何だろうか。以前ご紹介した幸福度調査に関するコラムでは「幸せを他人と比較して決める傾向」「自己主張と自己評価が控えめな国民性」といった定説に加え、日本にありがちな「不幸自慢」を指摘した。今回の移民とのギャップは、そうした国民性の独特さを裏付けているように見える。今後、移民をはじめ日本の職場で働く「非ネイティブ日本人」が増えて行くにあたり、同じレベルの幸福度を持って、違いを融合し多様化の進んだ職場となるためには、そうした日本人特有の気質にも変化が求められることになるだろう。

 毎年国連が発表する世界幸福度ランキングのレポートには、グローバルな観点から日本の働く環境を改善していくヒントがある。会社レベルで取り組む社員幸福度向上、思考や気質の国際化、多様化を促す研修や教育の提供、人材管理のトレーニングが必要不可欠な時代である。

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怒られる大人たちとパワハラ対策

「怒られないよう、頑張ります」
「怒られてばかりで辛い…」

企業研修や社員カウンセリングをしていると、こんな言葉が漏れ出てくることがある。口に出しては言わなくても、上司や同僚、クライアントから「怒られないように」という感覚を覚えながら、ときには、そのことに怯えながら仕事をしている大人も実は少なくない。

職場における様々な状況下で、力関係を使って他者に恐怖感を与えることは、ハラスメントである。残念ながら今の日本の社会ではいまだに根強く残っているものであり、パワーハラスメント問題の中には、「怒られる大人たち」が実存している。

大人として、社会人として「怒られる」とは、どういうことなのか?と改めて思う。時折テレビで「最近怒られたのはいつですか?」と成人男性に街頭インタビューしているのを見かけるが、恐らくそういった質問が放送ネタになるのも日本独特な風潮である。

私たちは、子供の頃から何かにつけ「怒られて」育ってきたように思っているのではないか。本来「やってはいけないこと」に対して「叱る」という躾の一部だったとは言え、怒られる経験と記憶を積み重ねて育ってしまったような。

そもそも、より良い方法を教示する叱る、と怒りの感情を出す怒る、はまったく違う行動だ。しかし、その違いは、当事者同士が体感的にどう経験したかでしかわかり得ないのかも知れない。その継続的な経験から、いつしか無意識に、怒られることを避けるための思考と行動をするようになる場合もあるだろう。もしくは、何かのきっかけから、怒る側に周ってしまうことで、今までの怒られる経験と記憶が、他人に対して爆発するような現状も引き起こす。

パワーハラスメントの状況を作り出すのは、怒る大人、怒られる大人、両方の潜在的なメンタリティが関係している。何が(誰が)正しくて、何が(誰が)間違っているのか。その追求だけに支配されてしまうあまり、人としての大事な叡智を見失ってはいないだろうか。私たちには「お互いにとってより良い方法を共有する」ための叡智がある。それは、言葉、態度、在り方そのものを磨いていくことであり、それが働き方改革になる。

惜しまれて亡くなった野球界のレジェンド、衣笠祥雄さんは有名な言葉を残された。「野次と罵声では、人は育たない」と。

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