『乖離』という言葉と新入社員定着の鍵

ゴールデンウォークも、「5月病」も乗り越えた!
ようやく職場にも慣れてきた新人社員も多いだろう。中にはすでに仕事での頭角を表し、周りからも期待され始めた強者もあるかもしれない。そうなれば、新人定着への第1ステップはクリアだ。

次なる第2、第3と続くビジネスキャリアも、気を引き締めて着実に進化の階段を昇って行って欲しいものである。職場に慣れていくほどに、会社の良い所の発見も、また失望を感じる機会も増える。特に上司や先輩社員の働き方・働きぶりが、自身の将来の姿を想像させ、そこに違和感を感じるようになれば、見切りの早い昨今の若手社員の目は社外に向いてしまうだろう。

 そうした潜在的な離職要因の早期察知と対策は、大げさな施策を講じずとも、どんな職場でも出来ることがある。上司や先輩から率先してコミュニケーションを取っていくことだ。どんなに自主性の高い新人でも、最初のうちは自身が組織に溶け込めるかどうかに不安を覚えるもの。さらに、組織に加わって日の浅いうちは、会社の慣習自体に疑問を持ちやすい。しかし、新人の多くは、そうした不安や疑問を切り出すのにも迷いや遠慮を感じがちだ。だからこそ上の立場に立つ者から積極的にコミュニケーションを取って、そうした不安や疑問を伝える機会を作りたい。

ここでいうコミュニケーションとは、頻繁に「会話する」ということではない。コミュケーションの本来の目的は「共通・共有」である。会話や文章での言葉のやりとりは、コミュニケーション達成の手段のひとつであって、目的達成はその先に構築する「事実の共有」 である。

 「乖離」という言葉は、これまであまり聞きなれなかったが、昨今メディアを賑わせているニュースの当事者が「理解に乖離があった」という使い方をして以来、にわかに知られる言葉になった。意味は「そむきはなれること。結びつきがはなれること」というもので、まさに「結びつきがなければ、どんなに言葉を交わしていても、事実の共有は不可能で、コミュニケーションは成立しない」ということだ。

多忙な部署であれば、上司や先輩が新人にゆっくりと向き合う時間が作りにくいかもしれないが、「ありがとう」「ご苦労さん」等のちょっとした声掛けだけでも新人にとっては嬉しいものだ。また、メンター制度を設けていくことも有効で、新人のサポートと同時にメンターとなる先輩社員の成長につながる。

 折に触れ経営者が直接的ではなくとも、何らかの形で新入社員に対してのメッセージを伝えることも必要だ。日本電産の永守氏はかつて賞与給与時などに、社員一人一人に手紙を書いたという。社員数2,000人に対してである。社長からの直接のメッセージが社員の心の安定と動機付けにつながり組織の結束力を高めたのは言うまでもない。経営者の見ている未来を、肌で感じて共有できることは社員には心強いもので、そのインパクトは新人にはより大きいはずだ。

 新人定着への鍵も、会社全体の社員エンゲージメント向上も、「乖離」という言葉など無縁のコミュニケーションを構築していく取り組みが重要である。

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