職場環境の新スタイルはコワーキングスペース

 職場環境と働き方の新しいスタイル「コワーキングスペース」。その中でも世界中で注目されている「WeWork」が、日本進出に向けて可動している。ネットニュースに発表された「ニューヨーク本社の見学記事」が興味深い。

 WeWorkの前身は、2008年に創業された企業Green Desk。2010年に持ち株を売却してWeWorkとして、単なるスタートアップ会社へのオフィス賃貸ではなく、コミュニティを構築するというコンセプトでコワーキングスペースの新事業に参入した。わずか7年間で脅威の成長を遂げ、すでに全米23都市、世界15か国44都市に進出。従業員は2200人を超え、今年3月にはソフトバンクが3億ドルの出資を発表し、今年中の上場も予測されている。4月には日本法人の求人募集広告が出たことから、国内でも話題を呼んでいる。

 現在の企業価値は日本円で約1兆9000億円とも言われるWeWork。ともなれば、見学記事の中に見たその企業理念に興味がそそられる。それは、「To Create a world where people work to make a life, not just an living.(単なる生活の糧ではなく、人生を創りあげるための仕事ができる、その場所を創造する)」というもの。働き方と生き方を相互サポートとして捉える考え方だ。

 WeWorkでは、設計プロセスにソフトウェアの開発方法論を取り入れた。それによって、より多くの人をより心地良く1つのフロアに収容することを可能にし、さらにはメンバー(入居者はこう呼ばれる)同志のネットワークの構築にも力を注ぐ。そこから生まれる社会的、精神的サポートで生まれたコミュニティは、勢いの良いまるで独自のエコシステムを創造しているようだ。そのエコシステムがWeWorkを他者との競争に大きな差をつけているとも言われている。

 記事で紹介されるニューヨークのど真ん中の本社は、アミューズメントパークやカフェような社内のインテリアや、そこにいる人のカッコよさとおしゃれが見て取れ、見た目だけでも圧倒されてしまう。内装やインテリアは働く人の人数から業務導線まで綿密に計算されており、採光や室内の建築素材、色の使われ方まで、「人生を創りあげる仕事」のための完全なるサポートを環境として構築されているという。下手をすると日本の現実から離れすぎて、別世界のできごとのように感じてしまう人も多いかもしれないと思うほどである。しかし、企業のコンセプトは「ここで何時間働こうが、働いている間は心地よく仕事ができ、刺激を与えられる場所を目指している」という誰もが常日ごろから普通に望む、身近でシンプルなものでもある。

世界のコワーキングスペースには職場環境改善のコンセプトが満載

 ベルリンでコワーキングスペースの草分けとなったザンクト・オーバーホルツの創業者のインタビューでは、「新しいものを提供することでユーザーにストレスを与えてはいけない。先を行き過ぎてユーザーを置き去りにしてもいけない。ほんの少し先にいながら、ファンシーになりすぎてもいけない」と述べていた。

 職場環境改善の鍵は、それぞれの企業文化とそのに働く人の特性の把握、それに合わせてどんなレベルのどんなアイディアを取り入れていくことが業績向上につながるのかを、ソフト面ハード面の両方をバランス良く整えることが求められる。外からのトレンドやノウハウをただ導入するのではなく、最も重要となるのは、自社の職場環境にも、自分の人生にも、真摯に向き合って生きる、という姿勢なのである。新しい職場のスタイルとして注目を集めるオープンオフィスひとつとっても、職種、年代別、会社の中に出来上がっている長年の習慣と概念と癖によっては、機能しない場合もある。

 自社の職場環境の現状を適格に把握し、そこで働く人の人生と仕事の相互サポートを環境で支えることで、会社そのものが業績という恩恵を受ける。世界の最新ワークスタイルを牽引するコワーキングスペースの先駆者たちからは、職場環境改善のコンセプトとヒントがふんだんに発信されている。

文:永田広美 ワークスタイルコンサルタント

参考:
https://www.lifehacker.jp/2017/05/170515_wework_ny.html

 

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