ブートキャンプ型組織構築-結束と個性

この10年ほど、多くの日本企業は「個人の資質、個性を活かす」ということに非常に強く焦点を当てた組織づくりがなされるようになってきた。それ以前の日本企業、日本の組織があまりにも「全体主義的」であったため、個々の社員の資質や特徴を活かす経営が出来ていなかったことへのアンチテーゼでもあった。

 「個人、個性を活かす」経営は、アメリカ型の人事管理手法、マネジメントやコーチングが手本にされることが主流で、海外留学や海外駐在経験者,あるいは海外企業の実例などを導入する日本企業が大きく増えた。

 ところが、「個人、個性を活かす」とは、アメリカでも組織構築の一側面に過ぎず、そこに気付いていた日本企業は、思いのほか少なかったのである。我々日本人が想像しているよりも、実際にアメリカでは基盤になる組織は「極めて軍隊的」なものであり、社員の個性を活かすためには、まずは組織全体としての結束を最優先しているのだ。そこに気が付かず、「社員の個性」というポイントばかりに集中してしまうことで、「自分勝手でわがままで、いうことを聞かない自分最優先社員」がどっさり生み出されてしまうという結果は、多くの人が実感しているのではないだろうか。

 アメリカの組織における「個人の資質」の活かし方とは、「優先すべきは組織」という概念が根底にあってこそなのだ。ひと昔前の日本の組織の「全体主義的」な、一見古めかしそうな概念も、時代に合った切り口、進化した手法を加味したうえでもう一度見直しができる会社であれば、わがまま自分最優先社員を減らす試みといして活用できるのだ。

さて、アメリカではダイエットでも企業研修でも、厳しめのトレーニングや研修を「ブートキャンプ」と呼ぶ。過酷なことで知られるアメリカ軍海兵隊の新入隊員向けの13週間の訓練が「ブートキャンプ」と呼ばれるものであり、この訓練で新入隊員たちは「自分たちは海兵隊という組織の一員である」という概念を心身ともに叩き込まれる。この特訓期間中は徹底した没個性と言っても過言ではない。その訓練手法は下記の3本柱で成り立っている。

1.「自己としての驕りの否定」を目的に、自分のことを一人称で呼ぶことを使用を禁じる(「私は」と言わず、第三者的に「この訓練
   生は」と言う)

2.格闘技とライフルの射撃術の訓練により、組織構成員として、限界を超える未開拓の能力を鍛え、集中力を養うなかで、呼吸、
  姿勢なども海兵隊式のものに徹底して変える。

3.総仕上げの戦術訓練により、組織の一員として自身の役割を明確に認知し、かつ身体知化する(体に覚えこませる)。

もちろん、こうしたアメリカ軍海兵隊スタイルをビジネス組織にそっくりそのまま取り入れることは不可能かつ非現実的ではあるが、3本柱は企業活動においても下記のように転換が可能だ。


1.仕事上では対社内外問わず、「私=I」の考えは最小限にとどめ、代わりに「Our company=我々の会社、弊社」や、
 「We=われわれ」として捉える。

2.自分が良いと思うやり方、これまでやってきたやり方を一度手放し、組織固有の手法、考え方を徹底して身につけ、実践する。

3.組織全体においてはもとより、部署、チーム等の活動において、自らの役割を明確に認知し、それを“誰に言われなくても、
  無意識に” 実行し、結果を出す。

この十数年、日本企業ではブレかけていた「組織の結束優先」という概念を明確にし、社員に徹底させた上でなら、はじめて「個人の資質」が活かされる。組織の結束と個人の資質のバランスが取れた状態が、これからの会社組織に求められる。

 バランス感覚のある「ブートキャンプ型」組織の導入は、日本ではまだまだ進んでいないが、上手に導入すれば組織のパフォーマンスアップは間違いない。