次世代へのバトンタッチは万全ですか?

大塚家具が発表した2018年の決算は最終損益324000万円の赤字となった。去年1年間の営業損益は51億円の赤字、3年連続の赤字である。関連ニュース

 こうしたことから大塚家具は日本と中国の企業が出資するファンドなどから38億円の資金提供を受け経営再建を図り、ネット通販の強化や店舗改装、失墜したブランドイメージの回復に活用する方針だという。

 先代創業者社長と現在の二代目久美子社長との「確執」はメディアなどでもお家騒動として報道された。先代社長の「古い」やり方ではこの先大塚家具は生き残っていけない、久美子社長の新しい考え方が大塚家具を再生させるであろう、という声と、先代が一代で築いたビジネスをそうそう簡単に変えられるものではなく、先代のやりかたにも良い面がたくさんあるのだから久美子社長の「新しい」やり方が必ずしもうまくいくとは限らない、という声、「賛否両論」が聞かれた。

 結果、大塚家具は3期連続の減益となり、今や企業としての存続が危ぶまれている。しかし、果たしてこれは「久美子社長が間違っていたから」なのか、先代が継続して事業を行なっていてもやはり同じ結果だったろうから誰がやっても同じだったのか。今となっては知る由もないのだ。先代と久美子社長の「社長」としての事業経営手腕の優劣やなどは、もはや

 「どちらが正しかったのか」は「論ずる意味すらない」

 唯一明らかなことは、「父から娘への引継ぎ~事業承継」が上手くできなかった、ということである。

 親娘の確執があったとしても、先代としては娘に次代として会社を任せるつもりだったことは間違いないだろう。しかし、会社のターニングポイントに事業の不振が重なり、事業承継のタイミングが会社全体を混乱と不安定の真っただ中に置いてしまったわけである。事業不振に加えて、親子の事業承継という元来日本の伝統的な会社継続の理想の「失敗」が、大塚家具のブランドイメージの失墜を招いてしまった。それがさらに売上と業績の低下に繋がったのである。

 現代の日本の会社組織は、高度経済成長期に起業した多くの経営トップが引退して次代に経営を任せるタイミングになってきている。そのため、昨今「事業承継」が話題になることが非常に多いが、今のビジネス界隈では、相続などを含む税務や資金・資産面の対策だけがフォーカスされていることが殆どだ。

 事業承継というものは、税務財務含め、経営トップがささっと「業務の引継ぎ」をすれば良いという話ではない。先代が築き上げた会社への「想い」をどのように次代へ伝え、それを次代が如何に自身の中に受け入れ、昇華させ、その後の経営に活かしていくか、企業の歴史の振り返り、次代社長の将来のビジョン、新規事業の計画、人事面の承継と新制度の導入など、先代と次代が密接なコミュニケーションを取りつつ、それなりの年月をかけて細部にわたって綿密に準備をしなければならないのだ。

陸上のリレー競技のバトンタッチは綿密な準備、計画と練習の上で成り立っており、本番でタイミングが少しでも狂えばレース全体が一気に不安定になる。企業での事業承継もそれとまったく同じであり、大塚家具の例をご覧いただければ明らかだ。

日本政策金融公庫総合研究所経営者の調査によると、自らの代で廃業を予定している企業の引退予定年齢は平均 71.1歳。また、親族以外への承継として、201512月にみずほ総合研究所株式会社が行った調査では、直近10年の従業員や社外の第三者といった親族外承継は65.7%に達している。外部への承継を考えるのであれば、さらに計画的に事業承継計画を早めに着手、60歳までには、とりかからねばならない。

 当事者である先代と次代のトップはもちろん、社員全員が陸上のリレーの選手になったつもりで一丸となって綿密にバトンタッチの計画をたて、シミュレーションを重ねたうえでの事業承継を実行することが肝要である。

 ある日突然、何の準備もしないまま、先代から次代へ、「明日からお前に任せる、頼んだぞ」というような引継ぎでは事業の安定した存続もままならない。「ある日突然」は極端としても、たとえ税務や資産についてはしっかり準備をしている企業であっても、トップの「人」同士のバトンタッチについてを「ぶっつけ本番」にしてレースに挑んではならないのだ。

「先代と次代の間のコミュニケーション不足とそれに伴うバトンタッチの準備不足」の結果、失墜した企業ブランドイメージを回復するのは並大抵のことではない。極論すれば「ほぼ不可能」と言って良い。世代交代、事業承継、美しいバトンタッチに「ある日突然」は不可能なのである。