職場環境の改善は「割れ窓理論」で考える

割れ窓理論とは、アメリカの犯罪学者によって理論づけされた、環境と犯罪の関係性を表したもの。「建物の窓が割れたまま放置されていると、誰も注意を払わなくなり、慣れが起こり、ほかの窓も割られていく」という現象を象徴しており、環境の善し悪しが、犯罪率や人の感情や行動に影響を与えるという考え方である。

有名なところでは、1994年にニューヨーク市長に就任したルドルフ・ジュリアーノ氏が、この理論を使ってまず徹底して行ったのが地下鉄や街中の落書きの清掃、タクシーの美化作戦。その結果、当時蔓延していた地下鉄での犯罪や無賃乗車が激減、さらにはニューヨーク市全体の犯罪率が低下した。

[ ニューヨークの地下鉄ビフォー(左図)、アフター(右図)]

この割れ窓理論は、職場環境の改善にも同様に効果が出るとして適応されることも多い。たとえば、片付かないデスクや書類、不良在庫や汚れたままの室内などが、いつからかだれも気にかけない当たり前の状態として慣習化されていき、そこから上司と部下のミスコミュニケーション、モチベーションの低下、業績低下への負の連鎖を起こしてしまうのである。

日本電産の永守重信社長は、「儲かっていない会社にはいくつかの共通点がある。社員の士気が落ちていて、工場が汚い。事務所も汚い」と語っている。また、某大手企業が老舗の会社を買収した際、会社命令として徹底して行ったのは社員の机の片づけだったという話もある。

『割れ窓理論はアップル社も救った』

かのスティーブ・ジョブス氏も、1996年に業績不振に陥ったアップル社を改革するために復帰した際には、割れ窓理論をあげて会社改革を行った。ジョブス氏に「まるで学級崩壊のような会社崩壊だった」と言わしめた状況を救うには「職場の環境を徹底的に変える」ことであり、業績改善のための社風一掃の第一歩は、汚いオフィスの改善の着手だった。汚い職場、乱雑な環境下では、業績低下はもちろん、不正の温床になりうる可能性があるとも言われる。

あなたの職場に、割れ窓状態は起きていないだろうか?職場環境を、社員の士気を、そして業績まで崩壊させてしまう「職場の割れ窓」が見過ごされていないだろうか?他のコラムでも紹介した「5S」は職場の整理整頓を成し遂げるために必要不可欠な5つの「S」(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)である。

中でも、割れ窓理論が最も作用するのは、「しつけ」のSであろう。しかし、職場環境改善においての「しつけ」には、会社として整理整頓を行う理念や方法などの基本的な考えの共有もなく行ってしまうことで、一方的な押し付け感やプレッシャーを与えて反発を買ってしまうこともある。「しつけ」よりも「習慣」のSとして、「割れ窓」を違和感として感じられる社内環境を習慣化するプロジェクトをお勧めしたい。

乱れたデスク、探すのに時間がががる書類、大掃除のたびに大量に出るゴミ、それらは「割れ窓」のメッセージなのである。今年の年末こそ、割れ窓理論を念頭に置いて、職場環境改善の大掃除に取り組んでみてはいかがだろうか。