【働き方改革】ダイバーシティの壁のムコウ

 働き方改革とダイバーシティのヒントはあらゆるところにある。米大手玩具メーカー、マテル社の「バービー」は、世界中の女の子が一度は手にすると言っても過言ではない着せ替え人形。たかが子供のおもちゃと思うことなかれ、ここにも大切な学びがある。

 バービー人形は何十年も前から、姿かたちも国際色豊かな多国籍バージョンが揃っており、さまざまな職業に就く「働くバービーシリーズ」も数多くある。そのバービーの恋人「ケン」も、昨年から多様性を反映した15種類のシリーズが発売されている。体系もさまざま、肌の色7種類、髪型9種類、スポーツウエアからビジネススーツまで揃う。

 子供たちは遊びの社会の中で、自分は誰なのかというアイデンティティを知り、自分とは違う姿かたちや考えを持つ人たちの存在に出会う。個性、多様性、国際性、ダイバーシティは、難しい知識よりも先に、小さな頃から心身で触れて身についていくのものでもある。アメリカでは幼児教育番組でも、当たり前に国籍の違う子供たち(日本のハーフタレントとは違う)が出演し、それぞれの人種のルーツや生活の違いに関わるエピソードも紹介される。障がいのある子どもも平等にキャスティングされる。ダイバーシティと触れながら育っていくのだ。

 日本の一般企業のビジネスマン2000人を対象にした「ダイバーシティに 関する潜在意識調査」では、「自分の勤務先には何かしらダイバーシティ促進の制度や施策があると認識している(65.8%)」と答えた人の過半数が「取り組みは遅れている、企業文化として根付いていない、理解されていない」と答えている。さらには「ダイバーシティに関する研修/トレーニング」を実施しているという企業はわずか 8.2%に留まった。

「ダイバーシティを推進するために重要なこと」に対しては、55.3%が「管理職の理解・努力」(55.3%)とし、「社内ダイバーシティ 支援制度の充実」(52.5%)や、「経営者の理解・努力」(49.8%)を上回っている。ダイバーシティ推進のカギは、制度の充実 だけでなく、管理職に求められる役割の大きさが明らかになった。 ダイバーシティ推進は、社内の風土づくり、促進のキイパーソンとなる管理職が、多様化する社会を個人的にどう受容できているかにも関わる。

ダイバーシティ促進のメリットは新たな価値の創造

また、ダイバーシティ促進のメリットに「女性が働きやすい環境になる」が60.4%だったのに対して、「業績が向上する」と答えた人はわずか16.4%だった。

 ダイバーシティ促進と、業績向上の関連性はまだぼんやりしたまま、というのが現状なのだ。しかし、定着自体はまだまだとは言え、「性別や国籍、宗教、価値観といった個々の多様性を互いに受け入れ、融合しあうことで、新たな価値が創造されるという考え方についてどう思いますか?」 という問いかけには、59.9%と多くの人が「共感できる」と答えている。環境改善やワークスタイル改革に必要不可欠となるダイバーシティの真の受容には、誰の心の中にもあり得る見えない壁を超える経験と勇気が必要なのかもしれない。その壁のムコウには「きっとなんだか素晴らしいものがありそうだ」と、潜在的に感じる人が今後も増えていく兆しだと思いたい。

 社会全体はもちろん、職場でのダイバーシティは、情報、知識、理解、行動によって定着していくものではあるが、その根底となるのは、個人の感覚と感情レベルでの受容である。人が自分自身の素晴らしさを自他ともに認められ、活かされ、支えあえることで、会社全体も、社会全体も豊かになっていく。そういったダイバーシティの最終ゴールを数値的にも想像でき、働き方改革として実践できる取り組みが、会社という組織の中に求められる時代に来ている。

文:永田広美 ワークスタイルコンサルタント

参考:
https://www.cnn.co.jp/showbiz/35103111.html?tag=cbox;showbiz
http://jp.pg.com/news/release_pdf/20160317p01.pdf