業績の上がる人材育成のカギは社員幸福度

 業績を左右する要素が、顧客満足度であることに異論を唱える人は居ないだろう。では、社員満足度、幸福度はどうだろう。近年では内外で研究が実施され、その関連性を肯定する結果が多く出され、人材育成のカギとしての社員満足度が注目されている。

 たとえば、働きがいや働きやすさといった職場環境と会社の株価には関連性はあるのか?世界の調査会社が発表した結果から見てみよう。

 ◎米フォーチュン誌による「働きがいのある会社」(2010年版)の高スコア25社のうち上場企業11社の株価を平均株価(東証株価指数)と比較。2007年3月から2010年4月の期間では30.5%上回り、2008年から2010年4月末の期間では17.1%上回った。

 ◎社員の満足度・幸福度と株価
 職場での満足度・幸福度の高い企業の株価は6年間の上昇率が市場平均より57%126%高い一方、低い企業の株価変動率は市場平均を下回る。(Glassdoor社)

 働きやすい会社と株価
Fortune の「Top 100 great places to work」企業の株価変動率は19852011年で平均を2.33.8%(年率)上回る。(“The link between job satisfaction and firm value” 2012年) 

 本題の社員幸福度と業績の関連性を突き詰めていくとなると、哲学的な議論にはまり込んでしまうが、直感的には頷く方も多いであろう。「幸福度」とは個人的な感覚であり、目には見えないものでもあり、さらには「職場において」だけでは形成されないものであることも重要だからだ。最近では「個人の幸福度」と「仕事」を対象とした数多くの調査結果も報告されつつある。

 ◎ 生産性は、幸福度の高い社員は12% 高く、低い従業員は10%低い(Warwick大学)
 ◎ 高幸福度の社員の創造性は86%高い (UC BERKELEY)
 ◎ 病欠は、幸福度の高い社員は66%少なく (FORBES)
      幸福度の低い社員との病欠日数の格差は10倍(iOpener Institute for People and Performance
 ◎ 幸福な社員は退職が51%少ない (GALLUP)
 ◎ 幸福な社員の事故率は41%少ない (GALLUP)
 ◎ 幸福な営業員の営業成績は37%高い (MARTIN SELIGMAN)

職場での社員幸福度を上げる専門職CHO

 社員の幸福度対策を専門とするCHO(チーフハピネスオフィサー)という役職の設置を提唱するデリバリング・ハピネス社では、CHO導入で売上40%増、社員定着率が90%に上昇した実績を上げている。

 そもそも業績を上げる要因が、経営資源の充実であることは疑いようもない。経営資源とは、人、モノ、カネの3つと知られているが、このうち、モノ、カネ以外の要素は社員の働き具合に依存する。さらに言えば、モノ、カネでもそれを扱うのは社員であるので、経営の全ての面で【人】が重要ということになる。

 人のパフォーマンス・生産性を左右するのが、スキル、モチベーション、そしてコンディションだ。このうち、 モチベーションは精神的要素で、多分に気持ちの持ちように依存する。社員のモチベーションが高まるのは、何かしらの理由で前向きに仕事に取り組めている時であり、そうしたポジティブ思考は幸福感によって生まれる。それは、本人の協調性や寛容力を高め、取引先や同僚などにもポジティブな影響を及ぼす。また、会社のミッションへも肯定しやすくなり、会社と従業員の関係も良好になるであろうであろう。アメリカのザッポス社は会社のミッションに、【社員と顧客に幸せを届ける】を掲げている。職場の人間関係が社員の幸福感を左右すると共に、生産性に最も強く影響する要素だとしているのだ。

 より身体的な要素であるコンディションについても、幸福感はストレスフリーで良好な健康状態維持に寄与する。さらにはスキル向上への学習能力や探究心も、幸福かどうか、つまりポジティブに取り組めるかどうかで左右されよう。これからの社員研修や人材育成には「幸福度」がキイポイントになってくる。幸福感が社員のパフォーマンスを向上させ、引いては会社の業績アップにつながるのは明らかなのだから。

文:鈴木一秀 シニアコンサルタント