イノベーションは職場環境から生まれる

イノベーションを産むのは常に人である。但し、エジソンのような人材が居れば別として、人がイノベーティブとなりやすい環境を用意することが条件となる。種をまくだけでなく、芽を出し幹が育つような土壌と環境を整えてこそ花を咲かせることが期待出来るのだ。

シリコンバレーの先進企業をはじめ、イノベーションを求める多くの会社では、その規模を問わず、働く人の創造性向上をもたらすために、人にストレスがかからず、コミュニケーションが活性化しやすうような配意と整理がされた職場の確保がいまや常識となりつつある。社員用のカフェテリアやスポーツ施設といった福利厚生的なものに目がいきがちだか、そうした施設設置は付随的であり、あくまで資金的余裕のある企業にとってのオプションと考え、まず、普段の業務を遂行するオフィス環境を整備することが、イノベーション誘発へ大切なステップとなろう。

環境とイノベーションの関係を理解し、花を咲かせ続ける企業の一つとして、ダイソンを取り上げたい。いまや掃除機の主流とも言えるサイクロン式のパイオニアであり、今でも真っ先に思い浮かぶブランドでもあるダイソン、その後も羽根のない扇風機やヘアドライヤーといった画期的な製品を生み出し続ける。昨年の売上が前年比40%増と好調な業績も手伝ってか、17年9月には電池から車体までの一括生産に拠るEV参入まで表明している。

競合他社と一線を画す高い機能と斬新なデザインの製品力を支えるのは、本社で社員の1/3を占めるエンジニアだが、そのエンジニアの創発を促すために工夫が込められた職場環境に競争力の源泉がありそうだ。そのキーワードは「オープン」「シナジー」「スペース」の3つ。

まずはオープンな空間の確保。以前の生産工場を転用したオフィスには、エンジニアのデスクが並ぶが、仕切りやパーティションがなく、それぞれのエンジニアがどこにいて、互いにやっていることがよく分かるようにしている。相談などが必要な時には、すぐに目当ての人をつかまえて、キャスター付きのホワイトボードを持ち込んでその場でディスカッションすることが出来る。

そして、関連する製品を開発するグループ同士の距離をなるべく近づけて配置するなど、チームの連携を産み出しやすい環境にも配慮している。例えば、主力の掃除機ではデザイン、製造、検査の各チームを寄せて配置して機能間の連携を取りやすくすると共に、近くにロボット掃除機の開発部隊も置き、相互に関連するチーム間のシナジーを産みやすい。

さらに、エンジニア同士のコミュニケーション活性化を図るために物理的空きスペースを用意する。オフィスの至るところに設けられた空間では、社員が立ち話したり、そのまま議論に入ったりして、簡単な打ち合わせやブレストをきっかけに面白いアイデアが生まれることも多いという。決められた時間や場所の制限されずに、その場で起こるコミュニケーションがイノベーションを誘発するのであろう。


無論、ハードだけでなくソフトも重要だ。創業者ダイソン氏が今でも前線に立って開発を引っ張るというダイソン、日本ではかっての本田やソニー、最近ではバルミューダなどを彷彿させまいか。ダイソン氏は日本人のテクノロジーに対する理解や姿勢をリスペクトしていることで、日本法人の優位性が高く、日本の社員にとってポジティブに働いているという。日本が技術立国としリスペクトの対象となり続けるために、トップが率先して示す創造性を重視する視線と、それを促す環境の整備がイノベーションの源泉となり、事業成長に資することを改めて心に留めたい。

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