感情労働の職場環境と社員幸福度を守るには

最近、メディアでもよく聞くようになってきた「感情労働」とそこから生まれる「感情疲労」。実は10年以上前から、感情労働は頭脳労働や肉体労働に加わる「労働ジャンル」として認識されている。

感情労働を代表するキャリアは、いわゆる接客業のプロたちであり、エアラインのCAやグランドスタッフ、コールセンタースタッフ、エンターテイメント施設のスタッフ、飲食や販売店員、医療関係者など、多岐にわたる。アメリカの社会学者、アーリー.R.ホックシールド氏がによって、感情の抑制や忍耐を強いられることが職務要素となっている業種を、Emotional Labor(感情労働)と定義されたものである。

そして、感情労働から生まれる「感情疲労」は、目を向けられることが少ないだけでなく、「感情労働で疲労すること」自体に対する偏見があるのも事実である。

日本ならではのおもてなし精神や、今でもなぜか日本人の心の奥底に潜む「お客様は神様」は、利他の精神の現れとなる一方で、ボーダーラインが崩れれば一瞬で闇をも生む。我慢や辛抱が美徳やプロとして在る姿とされがちな状況で無理な感情抑制が続き、抑制した感情を自己コントロールできなくなったり、自身の感情を麻痺させて乗り切る癖がつくことで、感情そのものが疲弊してしまう。

「感情労働で、心の切り売りをして疲弊し傷つく人たちが多くいる」という記事も目にした。本来なら、感情労働の成果と功績は、サービスを受ける人も、提供する人も、湧いてくる感謝や喜びの感情を共有できることの醍醐味であるはず。しかし、いつしか感情労働を「演技の強要」にしてしまったのではないだろうか。

ホックシールド氏は、感情労働の従事者には、意図的に表層演技(表情や声のトーンや話し方を作る)をするだけでなく、無意識的に深層演技(自身の潜在的な感情として自ら思い込ませる)をするようになる人も多くいるとしている。自身の感情を無理やりコントロールしてしまう癖が、そのうち感情や感覚の麻痺を起こし、心身のストレスや疲労すら感じなくさせてしまう。そこから、鬱症状などの精神疾患を招く場合もある。心のこもった接客という本来なら、誰にとってもプラスとなるはずのものが、大きくマイナスに作用してしまうケースだ。

こうした感情疲労は、どのような業種にも起こり得る。職場での上司、クライアント、もしくは同僚への対応や配慮に過剰なプレッシャーやストレスを課せられている人、感じている人は多いはずである。

社会人としての常識ある対応、大人の対応、お客様だからこその対応、それができてこそのプロ仕事ではある。だからこそ、自分自身のすべての五感+六感を駆使して、常に「自分の感情、感覚、体調」に目を向けることも大事である。感情疲労を重要視している多くの企業では、人事の評価・報酬を管理するチームとは別に社員がオープンに相談できるカウンセリングや相談先を設け、社員の心のケアや社員幸福度に向き合っている。

感情労働とされる業種や業務は、人を豊かに幸せにする価値ある仕事である。その業務に就く人にこそ、恵まれた職場環境が確保されるべきである。