勝ちたいんや!あの名言に職場環境改善のヒント

今年初めに70歳で他界された星野仙一氏は、日本野球界の名監督としての手腕はもちろん、一般会社員を対象にした「理想の上司」アンケートでは、常連の上位に挙げられていた。数多い星野流のエピソードの中には、リーダーシップや組織マネージメントのヒントも満載だ。

現役選手時代の星野仙一のイメージと言えば熱血漢であり、「闘魂」「燃える男」との異名を持ち、中日での最初の監督時代では変わらず「鉄拳制裁」が代名詞となっていた。野球界も一般の会社も、1990年代はまだそうした「熱くて強いリーダー」スタイルの効果が高く表れていた時代でもあった。

その後、時代の流れとともに、どの世界でも強権型熱血リーダーシップは敬遠されがちになった。当時の星野氏のような振る舞いは、今ならハラスメントと咎められるかもしれない。星野氏自身も、世代と共に変わる部下である選手の意識変化を察知した結果からか、人当たりも徐々にマイルドになっていった。自分のやり方だけに固執せず、時代の変化に対応して、言動を機敏にアジャストする柔軟性もリーダーシップの継続に求められるものの一つだ。

一方、星野氏のリーダーシップを支えていたのは、そうした目立ちやすい闘将らしさよりも、むしろ選手やコーチへの心遣いにあったようだ。選手を厳しく叱っても、その後にそれ以上のフォローをする。努力や苦労から結果を出した選手にはありったけの賛辞を惜しまない。新聞に掲載された選手のコメントにも細かく目を通し、最適な言葉とタイミングを模索する。「後方支援する奥さんや家族がいてこそ全力でプレーできる」として選手の夫人・家族の誕生日には花束などを贈る、などのエピソードは真摯な優しさで人事掌握をしていたことを物語る。星野氏の気配りは、選手だけでなくコーチ、さらには記者陣にも向けられたという。経営で言うなら、社員はもちろん、管理職そして取引先などのステークホルダーへの配慮も欠かせないということであろう。

会社員が選ぶ「理想の上司」の常連だった理由も、「燃える男」としてのパッションと、そのイメージに対極する優しさを合わせ持っていたことが、ビジネスマンたちの目にも「指導力があり、自分を育ててくれる」と映り、評価に繋がったのであろう。

2003年の新語・流行語大賞には、星野氏の言葉「勝ちたいんや!」がランクインした。短く力強いメッセージが人の心を動かし、率直な姿勢が信頼関係を築く典型的なスタイルであり、そこには氏が自著でも書いている「誰に対しても“分かりやすい存在”でなければならない」そして「基準はひとつ」という徹底した理念浸透のエッセンスがうかがえる。「勝ちたいんや!」はシンプルかつストレートに、チームに関わるすべての人が迷わず一斉に同じ方向を向ける言葉でもあった。

今後、日本の職場環境においては、働き手の多様化と個性化がさらに進み、求められるであろう。だからこそ、プロ集団の統率において足跡を残した星野氏のリーダーシップ、柔軟性、方向付けの力から学ぶものは多い。

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